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【囲碁が語源の意外な言葉まとめ】 ―身近にあふれる囲碁にまつわる言葉 15選― 

 

平安時代から広く親しまれ

枕草子や源氏物語といった古典作品にも数多く登場する囲碁

 

 

戦国時代には武将のたしなみでもあり

織田信長は名人の称号を許されたとも言います

 

 

現代では囲碁は知っているけど

やったことが無い、あまりなじみがないという人も多いかもしれません

 

 

でも実は碁が語源の言葉は身近にあふれていて

知らない間に使っていることも多いんです

 

 

1月5日は「い(1)ご(5)」の日です

身近にあふれる「碁」の言葉に触れてみましょう!

 

 

【囲碁が語源の意外な言葉まとめ】 ―身近にあふれる囲碁にまつわる言葉 15選― 

 

捨て石(すていし)

 

囲碁で後で役立てるために打つ、無駄なように見える石

作戦としてわざと相手に取らせる石の事

 

 

転じて

 

 

後で役立てる為の、一見無駄な行い

  

 

市会議員当選の夢もいまだに夢のまゝ残つてはゐるが、郷土産業発展の捨て石になる覚悟をきめた以上、名をとるか、実をとるか、こゝが思案のしどころだ。

 

「椎茸と雄弁」岸田國士

 

   

   

 

一目置く(いちもくおく)

 

囲碁では弱い人が先手になり、まず石を一つ置くことから

 

 

転じて

 

 

相手が自分より勝っていると認めて敬意を払う事

 

 

 

広太郎ほどの人間でも、舞二郎には一目置き、むしろ兄事けいじしているのである。

 

「剣侠受難」国枝史郎

 

 

 

 

 

傍目八目・岡目八目(おかめはちもく)

 

囲碁をわきの見物人の目(=おか目)で見ると、八目(=石が八つ置ける広さ)くらい有利な手が見つかるから

(「八手先までわかるから」ではない)

 

 

転じて

 

 

直接関係の人が見ると

かえって良し悪しがよく分かる事

 

 


「あたしが幸福なのは、ほかに何にも意味はないのよ。ただ自分の眼で自分の夫をえらぶ事ができたからよ。岡目八目でお嫁に行かなかったからよ。解って」

 

「明暗」夏目漱石

 

 

  

 

定石(じょうせき)

 

囲碁で今までの研究によって決まっている、石の働きがいい打ち方

一定の打ち方の形

 

 

転じて

 

 

決まったやり方の事

 

 

 

昼は一日書物を睨んで定石をそらんじ、夜は碁会所にあらはれて、たちまち実戦に応用する、といふ熱中ぶりだ。三ヶ月間つづいた。碁の定石と、外国語の文法は、同じ程度の学力によつて習得できるものである。

 

「囲碁修業」坂口安吾

 

 

 

 

 

活路(かつろ)

 

囲碁用語で石を生かすための道を見出すこと

 

 

転じて

 

 

生きられるみち
命の助かる方法という意味

 

 

 

不意を打たれてフョードル・パーヴロヴィッチはちょっとまごついたが、すぐに彼一流の活路を見いだした。

 

「カラマーゾフの兄弟」ドストエフスキー 中川省三郎訳

 

 

 

 

白黒つける(しろくろつける)

 

囲碁の碁石が白と黒から勝負をつけるという意味

 

 

転じて

 

 

物事の是非をはっきりさせるという意味

 

 

 

「今夜は一つ、先生に白黒をつけておもらいしてえと思いやしてね。この禿茶瓶はげちゃびんが、しゃくに触わってたまらねえんだ。ヤイッ! 前へ出ろ、前へ!」

 

「丹下左膳 日光の巻」林不忘

 

 

 

 

 

目論見(もくろみ)

 

囲碁用語で対局中に目を計算すること

 

 

転じて

 

 

くわだてる事。計画を意味します

 

 

 

僕はすぐ、谷山の恐ろしい目論見(もくろみ)を感づいたのです。……

 

「吸血鬼」江戸川乱歩

 

 

 

 

 

布石(ふせき)

 

対局の初めの頃に打つ碁石の並べ方

できるだけ広い領域を占めるように石を並べる事

 

 

転じて

 

 

将来に備えての用意、準備を意味する

 

 

 

そしてこれはまた、朝廷が東国東北の武士勢力を牽制けんせいするために打った一大布石であったことも、権力にたずさわる者にはすぐ読みとれていた。

 

「私本太平記 建武らくがき帖」吉川英治

 

 

 

 

 

手を抜く(てをぬく)

 

囲碁や将棋で攻め込まれたり、駒がとられたりする状態に対応せず

他の好所へ着手すること

 

 

転じて

 

 

しなければならない事をきちんとやらない

いい加減に済ます意味

 

 

 

妻としての愛情も、母としての役目も、それから科学も、等しく同列においてそのいずれからも手を抜くまいと覚悟していた。

 

「キュリー夫人の命の焔」宮本百合子

 

 

 

  

駄目(だめ)

 

白と黒のどちらの勢力範囲にもはいらない部分

そこに打っても意味がない、無駄な目

 

 

転じて

 

 

役に立たない様子

価値のない様子

 

 

 

「いや、そうじゃない。お前は駄目ばかり詰めて、肝腎かんじんの筋へは石を打たなかったんだ」
「ヘエ、たとえが碁と来たね」

 

「銭形平次捕物控 名馬罪あり」野村胡堂

 

 

 

 

駄目押し(だめおし)

 

囲碁では「駄目」に石を詰めて数えやすくして

勝敗をはっきり分けるようにする事

 

 

転じて

 

 

勝敗がほとんど決まったあと念を押すように得点する事

もしくは

念をいれて確かめる事の意味

 

 

 

「この事は誰にも言うたらあかんぜ。分ったやろ。また来るんやぜ」と駄目押した。けれども、それきりお君は来なかった。

 

「青春の逆説」織田作之助

 

 

 

 

 

先手を打つ(せんてをうつ)

 

囲碁や将棋で相手よりも先に打ち始める(差し始める)事

 

先手から打つ方が有利であることから

転じて

 

 

こちらから先に出て優位に立つ目的で仕掛ける事

 

 

 

――専務の持ってきた腹を読んでいる森本は、先手を打って出なければならないことを直感した。この動きかけている動き、先手! これ一つで、この勝負がきまると彼は思っている。専務にたった一言先きに、、、しゃべられることは、この集会をまんまと持って行かれることを、意味していた。――

 

「工場細胞」小林多喜二

  

 

 

 

後手に回る(ごてにまわる)

 

囲碁や将棋で後から打つこと

 

 

後手は不利とされることから

転じて

 

 

対応が遅れる事の意味

 

 

へんなもので、相手が酔ってしまうと、こちらはいつまでも酔えなくなる。後手に廻るわけですね。先手に廻らなくちゃいけません。

 

「霧の中 ―正夫の世界―」豊島与志雄

 

 

 

 

 

八百長(やおちょう)

 

前もって打ち合わせた上でわざと負けてやること

なれ合いの勝負

 

 

明治時代、

八百屋の長兵衛(ちょうべえ)が囲碁で
相撲の親方を相手にわざと負けていたことが由来

 

 

 

八百屋の長兵衛といふ男が、伊勢の海五太夫と、お座なりの碁をうつて、強いくせに負けて御機嫌を取つたといふ事が、八百長といふ相撲社会の隠語を生んだ。この社会にはいろ/\の隠語があるけれど、八百長といふのが一番ウマイ言葉に出来上つてゐる。これを相撲道以外の事に流用しても据りのいゝ感じがする。

 

「呑込み八百長」栗島山之助

 

 

 

 

 

結局(けっきょく)

 

囲碁を一局打ち終えること。終局。

 

 

転じて

 

 

(途中のいきさつはさておいて)最後には の意味

 

 

それで結局、お祖父さん達には、次のことがわかつたのである。――お寺の鐘をついたのは、他家よその腕白ものではない、うちの栄蔵であるといふことが。

 

「良寛物語 手毬と鉢の子」新美南吉

 

 

 

しりとり先生
しりとり先生
囲碁にかかわりがなくてもこんなにも沢山の語が身近にあって使っているのは驚きです🐱

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