オノマトペには歩く表現がとてもたくさんあります
表現が沢山あるという事は
それだけの歩き方があるという事です
そういう目線で歩いている人を見たら
「普通」に歩いている人…が
実は普通ではない歩き方をしていたのだけど
自分の語彙力がなかった為に表現できなかった…
という事があるかもしれません
今日は「歩く」にテーマを絞りご紹介いたします
早く歩くさまを表現するオノマトペ 4選
さっささっさ
=さっさっ
足を小気味よく動かしてすばやく速く歩くさま
深い落葉の道をさっささっさと歩みつづけた。中宮附近迄はまだ紅葉がのこっていた。もう何の怖ろしさもなくいつものような澄みきった心境で深山の大気を自由に呼吸することが出来た。
杉田久女「英彦山に登る」
すたすた
足取りも軽く、軽く地面を蹴りながら後ろも見ずに歩いていくさま
「出て行かうかなあ。さうだ出て行かう」そして私はすたすた出て行つた。
梶井基次郎「檸檬」
せかせか
焦っている気持ちで小股で速く歩くさま
小坊主の頭を一つ撫でると、小股歩きにせかせかと岸本家を退去していった
「雁の寺」 水上勉
てくてく
=てこてこ
わき目も降らず同じ調子で長い距離をひたすら歩き続けるさま
そう云って彼は、涙を隠しながら帽子を冠って、「さよなら」と云いさま、「松浅」の前を品川の方へ、電車にも乗らずにてくてく歩いて行きました。
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
遅く歩くさまを表現するオノマトペ 10選
とぼとぼ
落胆したようにいかにも力なく歩くようす
一、二丁いって、またふりむいてみますと、さっきのやせ犬が、まだとぼとぼあとを追ってきています。
新見南吉 「のら犬」
のそのそ
=のそりのそり
鈍そうな動きでまどろっこしいほどゆっくり歩くさま
今日は上天気の日曜なので、主人はのそのそ書斎から出て来て、吾輩の傍へ筆硯と原稿用紙を並べて腹這になって、しきりに何か唸うなっている。
夏目漱石 「吾輩は猫である」
のっしのっし
=のしのし
大男などが大股で、力強く一歩一歩踏みしめながら歩くようす
のしのし二階から降りていって、茶屋の一隅に腰をおろしゆっくりお茶を飲むのである
太宰治 「富岳百景」
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のろのろ
鈍い動きでなかなか進まない様子で歩くようす
ブドリは主人に言われたとおり納屋へはいって眠ろうと思いましたが、なんだかやっぱり沼ばたけが苦になってしかたないので、またのろのろそっちへ行って見ました。
宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
えっちらおっちら
つらそうにやっとのことで歩いているようす
ふたりの男は、そのあとから、おもい長イスを、えっちらおっちらと、はこぶのでした。
江戸川乱歩 「大金塊」
よたよた
=よれよれ
力なく足元がおぼつかない様子で小さく揺れ動きながら歩くさま
「千鶴子さんは、わたしと一緒にロンドンまで行きましょう。若い人たちをここで降ろして、老人とよたよた行くのも、これも良ろしよ。」
横光利一 「旅愁」
よちよち
幼児や老人、重いものを背負った人などが、小さい歩幅、慣れない足取りでたどたどしく歩くさま
爺さんが細い急な坂路をよちよちと登って来るのが見えた
志賀直哉 「暗夜行路」
よろよろ
足取りが定かではなく、今にも倒れそうに揺れながら歩くさま
夢中によろよろと歩いてゐる彼の姿は宛ら夢遊病者のやうであった
長与善郎 「青銅の基督」
ふらふら
体調が悪い時のように体をしっかり安定させることができない様子で歩くさま
やっと、彼は、その居酒屋から外に出ました。ふらふらと歩いて、町を出はずれてから、さみしい田舎道の方へといていきました。
小川未明 「百姓の夢」
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ぶらぶら
あてもなく時間をかけて歩くさま
ブラブラ百貨店を歩き回り、草臥れたらエスカレーターに乗って遊ぶ
舟橋聖一 「善意」
ちょっと変わった歩き方を表現するオノマトペ 6選
しずしず
盛装した人などが静かに歩き進む様子
ヴァイオリンを抱いてしずしずと登って来る所だった。
芥川龍之介 「路上」
しゃなりしゃなり
着飾った女性などが柔らかな身のこなしを気取って歩く様子
蛍狩云うたら、ああ云う風に友禅のべべを着て、しゃなりしゃなりして行かなんだら気分が出えへんねん
谷崎潤一郎 「細雪」
![](https://www.siritori.fun/wp-content/uploads/2022/11/05c4c740ab0faa1327f597f2558fccd6.jpg)
ぶらっかぶらっか
何のあてもなく歩き続けるさま
戸外をブラッカブラッカ為て歩く方が好うがアスなァ
橘家円喬 「一つ穴」 落語
ぽっくりぽっくり
少しずつ時間をかけて馬などが規則的に歩く足音、またそのさま
おうまのおやこはなかよしこよし いつでもいっしょにぽっくりぽっくりあるく
林柳波 「おうま」 文部省唱歌
ほっくりほっくり
少しずつ時間をかけて進むさま
としよりの坂をあがるごとくに、ほっくりほっくりと一字つつおしへさせられひ
伊呂波 「狂言」
ぼっくりぼっくり
少しずつ時間をかけて踏みしめながらあるく音、またはそのさま
小六ぼっくりぼっくり、ついたる竹の杖ころく
「松の葉」 歌謡
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